Category Archives: 手の痛み

尺骨管症候群・ギヨン管症候群

尺骨管症候群(しゃっこつかんしょうこうぐん)は別名、ギヨン管症候群とも言われ手の薬指、小指、手のひらに痺れや痛みを伴う病気です。 大工や機械技師など普段から強く握る作業を頻繁に行う職種の人に多い病気のため、男性に多い病気でもあります。

症状

症状としては手の薬指、小指が痛み始め、手のひらの痺れや痛みを感じ始めます。 疾患が進むと握力の低下だけでなく、手のひらの感覚が薄れてしまい触っても感じない、つねっても痛くなくなることがあります。

更に進行すると痛みが肘にも生じ、伸縮筋(小指側の手の筋肉)が痩せてしまい、くぼみが出来たり、手の厚みがなくなり平べったくなる、手先の細かい作業が困難になる症状が表れることもあります。

原因・検査法

痛みや痺れなどの症状が出る原因は、尺骨神経を圧迫してしまうことが要因とされています。 例えば長時間の運転でハンドルを握り続けることや、過度なスポーツ、手や指の骨折、軟部腫瘍など様々な疾患が尺骨神経を圧迫する原因となり尺骨管症候群を発症することになります。

尺骨管症候群の検査では、小指側の手首を道具で叩いたり手で弾き手に痺れなどの知覚障害の有無を確かめる「チネル微行テスト」を行います。

また、両手で紙をつかみ引っ張り合うことで症状のある指関節が屈曲するかを確認するフローマン徴候陽性を行う場合もあります。エックス線検査を用いることもありますが、画像に異常が認められることが少ないため多用はしていないようです。

治療法

尺骨管症候群の治療を行う場合には、まずヘルニアや糖尿などの持病を抱えている人はまずそちらを優先して治療をしていきます。これは、持病が要因となり手の関節に症状が出ていることも考えられるためです。

その後の治療では、軽度であれば安静を保つためテーピングや包帯で固定する方法もとられますが、痛みや痺れの自覚症状がある人には電気治療(干渉波・低周波・ライズトロン)・手技療法などがおこなわれます。

つき指

手に関する疾患で最も多いのがこのつき指でしょう。つきゆびは指先に急激な外力が加わった際、関節が左右どちらか一方にずれ、靭帯を損傷してしまうことで起こります。

適切な治療を施せば比較的短期間で完治することが出来ますが、治療をせず放置することで関節が変形することもあるため安易に考えないようにしましょう。

原因・症状

つき指は関節が左右どちらかに不安定に曲がることで起こります。これは指の関節が縦に曲げる、伸ばすなどの動作には強いのですが、横に曲げる動作が構造上出来ないことが原因です。

指関節は横の動きを防ぐため側副靭帯によって内と外の両側を支えています。 つまり、外から強い力が加わり本来出来ない左右の動作が行われることで、関節を支えている側副靭帯が損傷することになります。この状態が一般的にいわれているつき指なのです。

つき指の症状は慢性的な痛みが代表的なものになりますが、治療をしないことで指関節の変形を起こすこともあります。これは損傷した靭帯がそのまま元の状態に戻ってしまうことで起こる症状です。 もし変形が残ってしまうと手術以外では直せなくなるので、適切な治療を受けるようにしましょう。

検査法・治療法

つき指かどうかを診断するには靭帯を損傷しているかを確かめるテストが行われます。 テストではまず患部の指を少し曲げ靭帯を意図的に緊張させます。 その状態で横へ力を加えた時、痛みが増すかどうかを確認していきます。 もし、痛みが増すようであれば側副靭帯を損傷している可能性が高まります。

治療では患部を固定することが中心になります。ただし、患部の固定をしっかり行わないと関節が左右に曲がり、指を曲げた際に他の指の当たるなどの変形を起すことになりますので注意して行いましょう。

靭帯の損傷が激しく痛みを強く感じる場合には、電気治療(干渉波・低周波・ライズトロン)・手技療法を行い痛みの緩和をはかることもあります。

母指内転筋炎症

母子内転筋炎症は親指と人差し指の間にある母子内転筋が炎症を起し、痛みを生じる疾患です。 なお、「内転」とは親指を人差し指側に寄せることを意味する医学用語です。 逆に人差し指から親指を離し広げていくことを「外転」といいます。

つまり、母子内転筋炎症とは親指を人差し指側に曲げていくと炎症を起している筋肉に痛みを生じる疾患です。

原因・症状

母子内転筋炎症を起こす原因は様々ですが、つまむなどの動作を繰り返すことで起こりしやすい疾患です。つまむ動作には母子内転筋を使うため、繰り返すことで筋肉疲労を起します。 疲労が重なると筋肉が異常収縮をし、さらに炎症を起こすことで痛みを生じるようになります。

なお、母子内転筋は指の筋肉ですので手だけでなく足にも同様の炎症を起すことがあります。 ただし、足の指に炎症を起した場合、痛みなどの症状だけでなく足裏のアーチが少なくなり平べったい足になったり、指の付け根が横に広がってしまう「開帳足」(足の横のアーチがなくなっていることです)になることがあります。

治療法

治療では母子内転筋の炎症をこれ以広げないために、親指の動きをテーピングやサポーターなどで固定していきます。この際、電気療法(干渉波・低周波・ライズトロン)・手技療法を並行して行うことで回復を早めることが出来ます。痛みが落ち着いたらアーチを作ってくれるサポーターや足底板(インソール)も有効です。

手根管症候群

手根管症候群は親指から中指までの部分と、手のひらにしびれや激しい痛みを伴うもので、主に50~60歳代の手をよく使う女性に多い疾患です。

尺骨管(ギヨン管)症候群と似た疾患ですが、尺骨管症候群では小指側に症状が強く表れるのに対し、手根管症候群はその逆の親指側に強く症状が表れる特徴があります。 また夜間に痛み出すことがある点も尺骨管症候群との違いといるでしょう。

症状

手根管症候群の主な症状は、親指、人差し指、中指を中心に焼けるような痛みと痺れです。 また、症状が強く出る部分の感覚が鈍ってしまうこともあります。

症状が進行すると、母子球筋が痩せることもあり、中にはボタンをかける、物をつまむなど親指と小指を使う動作がしずらくなることもあります。表れる痛みは手首を叩くことで放散したり、痛みが肘や肩など体の中心部分に徐々に放散していくこともあります。

原因

手根管症候群を起す原因は手を酷使することで手の腱(長母指屈腱、浅母指屈腱、深母指屈腱)が太くなり、正中神経を圧迫してしまうこととされています。

長年人工透析を受けている人も手根管症候群を起こしやすいといえます。 これは、人工透析を繰り返すことで血中にアミロイドという成分が付着し、それが神経を圧迫してしまうことが原因です。

検査法・治療法

検査は手に刺激を与え痺れの症状の有無を確かめる「チネル微行テスト」や、右手の甲と左手の甲を合わせることで痺れの強さに変化があるかを確かめる「ファーレンテスト」を行っていきます。

治療法は症状の強さで異なりますが、痛みが強い場合はまずギブスやテーピングで手首を固定し、痛みの軽減をはかります。その後は電気療法(干渉波・低周波・ライズトロン)、手技療法、ビタミンB6などを組み合わせた治療法を行っていきます。

なお、筋力低下の症状が強い場合には靭帯を切開する手術療法が選択されることもありますが、メスを使用するため手首に傷が残ってしまうケースもあります。

ばね指

手指を頻繁に使う中年期以降の女性が発症することが多いのが特徴で、ばね指は、一度伸ばしたり、曲げたりすると元に戻らなくなってしまい、無理に戻そうとすると痛みを伴うことが多くあります。 朝起き抜けに症状がよく現れます。

症状

発症する場所としては、親指が最も多く、50歳代、60歳代の女性に多いのが特徴です。 指を曲げるときにゆっくりと指を動かすことができなくなり、急激にバネのように曲がってしまうため、ばね指と呼ばれています。 また、症状がひどくなると、関節がうまく動かせなくなってしまいます。

特に女性の罹患率が高い理由としては、細かい手作業をする場合が多いためと考えられています。その他にもパソコンのタイピングが多い方もなります。

原因

手足の筋肉はその先端が腱といって、細くなって骨に付いています。 その腱がなめらかに動くように、腱鞘という腱が通っている管がありますが、その手指の腱鞘が炎症を起こすと、腱鞘の内径が狭くなってしまい、腱が滑らかに動かなくなってしまいます。

以上のような原因により、本来ならば自分の意志で自由に動かせる指がうまく動かなくなっている状態が、ばね指と呼ばれている病気です。

治療法

ばね指の方に試してもらいたい治療法は、朝起きて曲がっている状態の指を無理に伸ばそうとせず、洗面器などに温かいお湯を張り、その中に手を入れてゆっくりと握ったり伸ばしたりするストレッチを試すことをおすすめします。

その他の治療法としては、テーピングでの固定、その筋肉自身とかばった筋肉に電気療法(低周波・干渉波・ライズトロン)・手技療法などがあります。 急性期には外科手術によって腱鞘を切開し、腱が滑らかに動くようにすることもあります。

ヘバーデン結節

ヘバーデン結節は手指の第一関節にのみ発症し、関節が腫れ、痛みもあります。 場合によっては、爪までも変形することもある病気です。 ヘバーデン結節は左右の手指に対象に発症することもあり、主に40歳代以降の女性が多く、原因は解明されていません。

症状

手指の第一関節のみに腫れや変形が現れるのが特徴です。その他の関節が腫れたり、変形したりするときは、リウマチなどの可能性が高くなります。 遺伝や女性ホルモンが関係しているという説がありますが、定かではありません。

さらに、痛みによって指に力をいれることが難しくなるため、物がつかめなくなり、日常生活にも支障をきたすことがあります。

治療法

治療法として、まずは指の固定です。テーピングなどによって指の第一関節を固定します。 固定することによって、痛みも軽減される場合もあります。

その他の治療法としては、電気療法(干渉波、低周波)、手技療法などがあります。痛みが強いようであれば整形外科にて消炎鎮痛剤の投与などもあります。自分でできる治療法としては、指を弱めにそっと伸ばしたりするストレッチが有効です。

症状があまりにもひどい場合には外科手術によって、関節を固定する場合や、関節を成形する方法、関節の腫れの原因である関節液を取り除いたりする方法があります。

予防法

ヘバーデン結節の予防法としては、関節の痛みを感じる時には安静にしていることが大切です。 やむを得ず指を使わなければならない時には、テーピングなどによって関節を固定しましょう。

ヘバーデン結節は指の病気ですが、体全体を使ってストレッチや体操などをすることもおすすめします。体を使うことによって指への血行も促進されます。 指を使ったストレッチとしては、「結んで、開いて」を行うことも手指の血行を促進するために有効です。

手関節捻挫・TFCC・三角線維軟骨複合体損傷

手関節捻挫はその名の通り手の関節に起こる捻挫です。主に手を無理に捻る動作を繰り返すことで起こりもので、テニスや野球など手を使うスポーツでよく起こる疾患です。

なお、捻挫とは骨と骨をつないでいる靭帯が過度な動きに絶えられず、伸びたり切れたりすることをいいます。そのため手首だけでなく足首、肘、膝など靭帯がある部分であればどこにでも起こり得る疾患なのです。

原因

手の関節で捻挫を起す場合、その多くが手首をねじる動作を繰り返したり、転んだときに手をついてしまった際に起こります。テニスや卓球、ゴルフなどのようにスピンを掛ける動作が多いスポーツで起こりやすい怪我なのです。

本来、捻挫とは靭帯を損傷することを表していますが、手には指、指の骨を支える骨、手のひらの骨、手首の骨と様々な骨から構成されており、その骨は靭帯で繋ぎ合わせています。 手に靭帯が多い以上、損傷することも多いので。また、手首を捻る動作を繰り返すことで靭帯だけでなく、骨と骨の摩擦を防いでいる軟骨をもすり減らすことにもなります。

症状・検査法

手関節捻挫の症状は痛みですが、何もしなくても痛いということは少なく、手をついた時や、ドアノブを回すとき、お風呂の湯を汲む時などに手首が痛くなります。適切な処置を施せば比較的短時間で回復していきますが、三角線維軟骨(TFCCとも言います)のように血行の悪い部分を損傷してしまうと痛みの後遺症が残ることもあります。普段、痛みが出てないため、ほっておきがちなので症状が酷くなることがあります。

捻挫かどうかを見極めるには「尺骨頭ストレステスト」を行います。 これは手を開いた状態で手首を小指側に曲げる動作をし、手を内外に回したり押し込んだりときに痛みがあるかを確認する検査方法です。 これで痛みを感じるのであれば靭帯を痛めている可能性があります。

治療法

捻挫の治療は部位に関係なく安静、冷却、圧迫、高く挙げることを組み合わせ、筋肉の緊張と靭帯の炎症を緩和していくことが基本になります。これらの動作は頭文字を取ってRICEと呼ばれています。

RICEは捻挫だけでなく、骨折、打撲にも有効な治療法なので覚えておくといいでしょう。 RICEが終わると、テーピング、包帯、ギブスなので患部を固定していきます。 痛みが酷い場合には電気療法(干渉波・低周波・ライズトロン)、手技療法が有効です。

ドゥ・ケルバン病

ドゥ・ケルバン病は、手をよく使う職業の方や、女性の更年期に多く見られる症状で、簡単なテストをすることでわかります。 手の親指にはたくさんの腱(筋肉の端っこ)が集まっていますが、それらの腱が通っている腱鞘という管が炎症を起こすことにより発症します。

症状・原因

痛みが起こる部分は、親指側の手首で、手を動かすたびに痛みが走ります。 ドゥ・ケルバン病は、手首の骨のところに通っている腱鞘が炎症により肥大し、親指に付いている腱がうまく動かなっている状態です。 これらの腱には、親指を他の指と並行に伸ばすときに必要な短母指伸筋腱と、親指を親指を他の指と直角に広げるときに必要な長母指外転筋腱があります。

具体的な原因としては、主にパソコンなどでの指の使いすぎや、女性の場合ホルモンのバランスの崩れによって発症する可能性も考えられます。

腱鞘炎の中でも親指に多く起こるため、ドゥ・ケルバン病という特別な病名が付けられています。

検査法・治療法

親指を手のひらの中に入れた状態で拳を握ります。その状態で拳を小指側に動かした時に痛みが起こると、ドゥ・ケルバン病の疑いがあります。

治療法としては、手の動きを制限することが重要です。具体的には、テーピング・包帯・サポーターなどを使うなどの方法が有効です。

その上で、電気療法(干渉波・低周波)・手技療法により修復を促す方法があります。また、症状がひどい場合には、手術によって肥大した腱鞘を切除することもあります。