肘内障

肘内障は、2~10歳くらいの子供に多く見られます。 よくお母さんが子供の腕を強く引っ張った時に、腕が外れてしまった、というような状態です。 こうなってしまうと子供は痛がり、手を上げられなくなります。 肘内障は癖になることがありますので、その後の治療も重要になります。

 

症状

よくお子さんを連れているお母さんが、お子さんの腕を強く引っ張ったその瞬間に、前腕が抜けてしまったようになってしまうことがあります。 これが肘内障と言われる症状です。前腕はぶらぶらしていまい、腕を上げられなくなり、子供は大変痛がります。

この肘内障は子供に起こるものではとても多く、一種の脱臼といってもいいでしょう。 正確に言うと、肘の骨が脱臼したのではなく前腕の骨が輪っか状の靭帯から抜けて外れかかった(亜脱臼)状態です。

治療法

治療法としてはコッヘル法という整復の仕方があります。簡単なやり方ですが、素人の方がするべきではないと思われます。何度も整復に失敗して病状を悪化させたり、靭帯に損傷を与えたり、骨を傷つけてしまうこともあり得るからです。 その他の治療法としては、包帯で固定などがあります。

予防法

まず親御さんに注意してほしいことは、子供が身構える前に急に腕を引っ張らないことです。 もし腕を引っ張る場合には、一言子どもに声をかけてからにしましょう。 何度も肘内障を繰り返している方の場合、整復しづらくなることがありますので子供のためにも気を付けてください。

上腕骨内側上顆炎・野球肘

上腕骨外側上顆炎との違いは同じ肘の炎症ですが、上腕骨内側上顆炎は、肘の小指側にある内上顆が炎症を起こしているものです。 上腕骨内側上顆炎は、特に野球・テニス・ゴルフをプレーしている方や、中年期以降の女性に多く見られます。 重篤な場合には、外科手術による治療も考えられます。

原因

原因としては、野球では投球フォームが適切でない・使い過ぎ・ストレッチ不足があります。テニスではラケットのサイズ・ガットの張り方が原因の場合があります。 野球・テニス・ゴルフ全てにいえることですが、正しいフォームでプレーをしていても、手首の関節を使うとともに前腕を捻るために肘の内側に負担がかかり、上腕骨内側上顆炎を起こします。 その他にも仕事で重いスーツケースなどを持ち運びする方などにも見られます。

症状

上腕骨内上顆炎はプロテニスプレーヤーやプロゴルファーにも見られる症状で、手首を内側に動かすためにある肘の筋肉の腱を痛めてしまった状態です。

テニスやゴルフをプレーしている時はもちろんですが、プレーしていない時でも、肘を曲げて重い荷物を持った時や、電車などのつり革につかまっているとき、手のひらを握りしめた時などに痛みを感じます。

上腕骨内上顆炎を起こしているにもかかわらず、治療をせずにテニスやゴルフをプレーしたり、重い荷物をもつなどを繰り返した場合、腱が骨から剥離し出血してしまいます。

治療法

痛みを感じる動作を止めることが大切ですので、状態によりますが初めは肘に負担のかからないようにします。痛みが強い・もしくは繰り返すなどの時は一度傷める運動はストップします。治療法としては、電気療法(干渉波・低周波・ライズトロン)手技療法などがあります。

上腕骨外側上顆炎・テニス肘

上腕骨外上顆炎をわかりやすく言うと、テニス肘などと呼ばれる症状です。 テニスのみならず、スポーツをしている方なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 実際には、テニスが原因で発症することはあまりなく、手首を使った機械操作やパソコンのマウス操作を多くする方によく見られます。

症状

上腕骨外側上顆炎を発症すると、タオルを絞ったり、ドアノブを開閉したりするような手首をひねるような動きや、物を持ち上げる動きをする時などの場合に、痛みが強く起こります。

上腕骨外側上顆炎は外見上では腫れなどがなく、安静にしている時には痛みを感じません。 そのため、炎症を起こしているにもかかわらず、機械の操作や作業などをしてしまうことが多々あります。その結果、症状が進行していき、安静にしている時でも肘に痛みが起こります。

そして最悪の場合、指を反らすなどちょっとした動作をしただけでも痛んだり、肩から首のほうまで痛むようになります。

検査法

検査方法にはいくつかの種類がありますが、一般的な検査方法をご紹介します。 トムゼンテストは拳を作り手の甲を上にし、肘を伸ばした状態で、手首を手の甲側(上)に曲げてもらう時に抵抗をかけ、肘に痛みが起こったら上腕骨外側上顆炎とされます。 ミドルフィンガーテストは、肘を曲げたままにしておき、中指(もしくは人差し指)のみを上に伸ばしてもらう時に抵抗をかけ、肘に痛みが起こった場合、上腕骨外側上顆炎とされます。

別の検査方法として、チェアテストがあります。このテストはある程度の重さがあるもの(椅子やバッグなど)を手首の力だけで持ち上げてもらいます。この時に肘に痛みが起こった場合、上腕骨外側上顆炎とされます。

治療法

有効な治療方法として、ストレッチがあります。 痛みがある段階で筋肉を伸ばしたりしても大丈夫なのだろうか、と思われるかもしれませんが、自ら行うストレッチであれば、おのずと限界を超えることはありません。

ストレッチの具体的な方法としては、手をまっすぐ開いて、手の甲を上にし、肘を伸ばした状態で前に腕を上げます。 そしてそのまま手首を上げたり下げたりします。 さらに、片方の手で負荷をかけるとより効果的です。

その他の治療方法としては、電気療法(干渉波、低周波)、手技療法、テープを使い筋肉のサポートをしたり、テニス肘サポーターを使う方法などがあります。

肘部管症候群

肘部管症候群は建築関係など常に肘を曲げて作業をしている方によく見られます。 また、先天的に肘が外側に反っている方も多くおられます。 時には肘関節の骨折や外傷などにより発症することもあります。

症状

肘部管症候群の症状は、薬指・小指~肘にかけて常にしびれを感じ、知覚異常があります。また、このしびれのために、文字を書いたりなどの細かい作業が困難になったり、物をうまくつかめないなどの症状が出てきます。

さらに、このまま症状が進行した場合、特に薬指と小指の筋力が弱くなっていき、指先がカギ状に折れ曲がり、まっすぐに伸ばすことが困難になります。

これらの原因は、肘の内側を通る肘部管という管の狭窄などにより、肘部管内部を通っている尺骨神経が圧迫されることにより発症します。

検査

検査方法にはいくつかの方法がありますが、チネルテストにより判断することができます。 このテストは、肘の内側のちょうど肘部管のあたりを軽く叩き、その時に薬指や小指にしびれが出るかどうかで判断します。

そのほか、レントゲンやMRIによる検査も行われることがあります。 これは、原因が肘部の骨折や、患部が頚椎にある場合がありますので、このような時には有効な検査方法です。

治療

有効な治療方法として一番に挙げられるのは、肘を伸ばしたまま固定することです。 また、電気療法(干渉波、低周波)や、手技療法にて周囲筋をほぐし神経の圧迫を少なくします。その他には、外科手術による方法もあり、直接尺骨神経の圧迫を取り除く場合や、尺骨神経の通り道を変える手術があります。外科的手術を行う場合は、筋力の低下のない段階で行われます。

中殿筋・小殿筋炎症

中殿筋、小殿筋の炎症とは股関節を支えている筋肉に炎症が起こる病気です。 性別に関係なく起こるものですが、女性に多い病気だといわれています。 また生まれつき股関節に疾患がある人も起こしやすいといわれています。

原因・症状

元々、股関節に先天性の疾患、例えば脱臼くせがある人や、膝関節に痛みがあり足を引きずる人、ぎっくり腰など急性の腰痛を治療せず放置している人はこの病気を発症しやすいと言われています。 これは、痛みを避けたいがために足を引きずる歩き方をすることで、股関節に過度の負担がかかることが原因です。

股関節には外側にある「中殿筋」という筋肉と、内側の「小殿筋」によって関節の動きを支えています。しかし、姿勢の悪い歩き方を繰り返すことで中殿筋に負担がかかり、中殿筋が異常収縮しはじめます。異常収縮を起すと本来の機能を発揮出来なくなりますので、抱えきれない負担が今度は内側にある小殿筋にかかるようになります。

この負担が原因となり筋肉疲労を起し、結果、炎症を起すことになるのです。炎症を起している以上、股関節や腰周りに痛みが生じます。これを放置してしまうと骨盤にまで影響が出ることになりますので注意が必要です。 中殿筋や小殿筋を傷めてしまうと、脚へのシビレが伴うこともあります。

治療

筋肉の炎症からくる痛みは我慢してしまう人が多いのですが、これは大変危険な行為といえます。 筋肉が異常収縮していることは、本来の機能を発揮できていないことを意味します。 そのため、支えきれない負担が今度は骨盤へかかり、最終的には自力では立てなくなることもあるのです。たかが股関節痛、腰痛と侮らず必ず治療するようにしましょう。

治療では、異常収縮をおこしている筋肉の緊張を和らげる方法が効果的です。 そのため、電気療法(干渉波・低周波)や手技療法、ストレッチなどが有効です。 痛みが強く日常生活に支障をきたすようであれば、筋肉の動きをカバーするコルセットを使うといいでしょう。

産後・産前の腰痛、不妊症

女性は産前や産後に腰痛を起すことがあります。原因はさまざまですが、産前はお腹が大きくなることでお腹をかばう為後ろに反らし、産後は体重の増加や子供の相手で前かがみになることが増えることなどが挙げられます。 人によって痛みの程度は異なりますが、例え痛みが強くても妊娠中、授乳期に起こるため薬物療法は行えません。

原因・症状

女性特有の腰痛といえるのが産前・産後の腰痛です。腰痛を起す主な原因は体重の増加と姿勢と言われています。妊娠期は体重が増えやすいのですが、妊娠5ヶ月にもなればお腹の胎児も大きくなります。この2人分の重量が腰椎の椎間板に加わるため動作をするたびに椎間板に負担がかかり損傷しやすい状態なのです。

また、胎児が大きくなるにつれお腹を前に出す動作(反り返る動作)が増えるのですが、これは腰椎を前にせり出すことになり、腰へ過度な負担をかけることになります。 また、負担は腰椎だけでなく脊柱起立筋にもかかるため筋肉疲労を生じることになります。

産後の腰痛も原因は似ており子供を抱えた状態で立ち上がる、座るなどの動作が増えることで腰痛に負担がかかることが腰痛を起すのです。

治療

産後・産前のどちらも薬物療法は出来ません。 そのため治療では産前はお腹に負担のかからないように横向きで背中を手技療法でほぐします。ただし、腰や骨盤周りについては無理できません。産後は手技療法や増えた体重を元に戻すなどしてもらい、2~3か月後なら骨盤調整などもしたほうがよいでしょう。産前・産後共に、椅子の高さに注意するなどの負担を掛けないよう姿勢に注意するような日常生活の改善とコルセット(骨盤周り(トコちゃんベルトも同様のものです))なども利用されるとよろしいです。 それ以外にも患部を冷やさないことも重要になります。

尾骨痛

尾骨痛は尾てい骨に痛みが生じる病気です。デスクワーク、タクシードライバーなど長時間椅子に座る仕事の人や、しりもちなどで尾てい骨に強い衝撃を受けた人の多く見られる病気です。 これ以外にも尾骨は人間が動物だった頃の名残りのため、生まれつき尾骨が長く、出ている人も尾骨痛を起こしやすいといわれています。

原因・症状

尾骨は肛門の上にある尻尾のような骨をいい、子供の時は5つに分かれています。 しかし、年齢を重ねるにつれ5つの骨はくっつき動かなくなる珍しい骨です。 この尾骨に痛みを生じる原因は尾骨周辺に筋肉がないことがあげられます。

通常、骨の回りには筋肉があり、外部からの衝撃や、内部からの刺激を防いでいます。 しかし、尾骨には筋肉がないため、外力も直接響き床ずれもしやすい箇所なのです。 また、やっかいなことに尾骨の周辺は大変血流が悪い部分なので、尾骨痛を発症するとなかなか完治しない特徴があります。

尾骨痛の症状は、その名の通り尾てい骨周辺の痛みなのですが、人のよっては腰痛を感じたり、股関節周辺に違和感を感じることもあります。

治療

尾骨痛は血行が悪く完治しにくい特徴があるため、血行を促進する治療が高い効果を発揮します。 そのため、鎮痛や血行促進を促す電気療法、手技療法、ライズトロンなどが治療法としては有効です。 痛みの度合いによっては鎮痛剤を処方されるケースもありますが、尾骨は血流が悪いうえに骨の先端部分にあることから高い効果は期待できません。

場合によっては、お尻周辺の筋肉や仙腸関節が原因となっているケースもあるため、筋肉の緊張をほぐすストレッチ、仙腸関節の機能異常を整える手技療法が効果を発揮することもあります。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアは脊椎と脊椎の間にあるクッションの役目を果たしている椎間板の中の髄核が飛び出し、神経を圧迫することで痛みを起す病気です。 髄核の周りには線維輪という丈夫な組織がありますが、その線維輪を破って髄核が出るタイプと、線維輪を破らないで出るタイプがあります。 主に働きざかりの男性、特に20~50歳代の人に多く見られる病気です。 発症すると激しい痛みが腰、太もも足などに起こり、人によっては痺れの症状を伴います。

症状・原因

腰椎椎間板ヘルニアの症状は激しい痛みと痺れですが、これは腰だけでなく足にも生じます。 痛みの出方により「急性型」と一般的「慢性型」に分けられ、急性型の場合にはぎっくり腰のような激痛が生じます。痛みや痺れの症状は背中を丸めたり、前かがみになると強くなる特徴があります。

痛みが起こす原因は椎間板の中心部にある髄核が何らかの理由により外に押し出され、背骨の神経を圧迫・刺激することで起こります。

なお、痛みが腰だけでなく足周辺にも起こるのは、腰椎の周りにある神経が腰、太もも、足の甲、親指、膝下などの領域を担当しているためです。また、椎間板ヘルニアは腰に起こるのが一般的ですが、頚椎で発症することもあります。

検査・治療

腰椎椎間板ヘルニアを起しているかどうかを確認するには「SRLテスト」が効果的といえます。 検査では患者を仰向けに寝かせ、脚をまっすぐに伸ばした状態で持ち上げていきます。 もし、腰椎間板ヘルニアであれば足を動かすことで腰の神経が圧迫されるため、非常に強い痛み・痺れが生じることになります。

腰椎間板ヘルニアの治療では安静にし、坐骨神経の緊張を緩めていくことが第一といえます。 これにより痛みを抑えた上で、電気療法、温熱療法、手技療法、運動療法を行っていきます。 痛みが引かず日常生活に支障をきたす場合には、手術で飛び出したヘルニアを切除していきます。

ただし、椎間板ヘルニアは髄核が線維輪を破って飛び出るタイプは、飛び出た髄核を貪食細胞という免疫に関係する細胞が異物と認識して食べるので、数ヶ月で消失するケースが大抵です。しかし、線維輪を破らないタイプのものは、自然消失は難しいでしょう。 手術をすると、その切った部位が傷になり、筋力が下がり、かばう為筋肉が固まったりします。元の生活に戻すのにかなりの時間がかかります。(手術後にまた出てしまうこともあります。)手術は最終的なものにしたほうがよろしいと思います。

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症は50歳代の男性に多く見られる疾患で、骨の変形などにより神経が圧迫され脚に痺れなどの症状を起すものです。重症化すると歩行障害を伴うこともあります。 痛みや痺れは休むと治まり、また動き出すと表れるのがこの疾患の特徴といえます。

原因・症状

脊柱管狭窄症が起きる直接的な原因は生まれつき狭窄がある、椎間板ヘルニアの手術を受けたこととされていますがはっきりしたことは不明です。 ただし、現在の整形外科科学では腰椎すべり症などが要因となり靭帯が厚くなることや、骨の変形などが狭窄を起すとされています。

症状は脚の痛み、痺れなどの症状が起こり、場合によっては歩行障害が伴うこともあります。 これらの症状は脊髄などが通っている脊柱管が、周辺骨の変形や、椎間板の膨隆などにより脊柱管が押され中の神経を圧迫してしまうことで起こります。

検査・治療

脊柱管狭窄症の診断では症状の原因がヘルニアか狭窄症なのかを調べていきます。 検査方法は仰向けに寝た状態で脚をまっすぐ上に上げていきます。この際、脚が70度まで上がる前に強い痛みを生じる場合は椎間板ヘルニアの可能性が高まり、70度以上脚が上げられれば脊柱管狭窄症の可能性が高まります。 ただし、こちらも誤診されてしまいやすいもので、手技療法で痛みが軽減しやすいものでもあります。 治療はまず、手技療法や装具療法の着用、日々の姿勢改善や運動を行います。手技療法で変化がでなければ、整形外科にて、レントゲン・MRI検査を行い、神経の圧迫がどの程度なのかを調べていき、脊柱管を広げる手術が用いられます。痛みが強い場合には鎮痛剤、湿布などの薬物療法も併せて行います。