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外反母趾

症状

外反母趾とは、一言でいえば、「足の親指が外側(小指側)に曲がる」病気です。この親指の曲がりがひどくなると、足が痛くて歩けなくなり、足は変形して、普通の靴が履けなくなります。その上、痛くて無理な歩き方をしていると、脚が疲れやすく、膝や股関節まで痛みます。

外反母趾の症状が軽いうちは、きつい靴を履くのをやめると、痛みはやわらぎます。しかし、一度、外反母趾になると、ハイヒールやパンプスをやめて痛みが軽くなっても、親指の曲がりは、歩くだけで自然に進行するのです。ですから、痛みが軽くなったといって油断すると、年をとってから変形がひどくなり、痛みも再発してくることになります。

そして、外反母趾が進むと、親指以外の指も外側に曲がり、脱臼したり、くの字に曲がって固まってしまい(槌趾)、伸ばすことが困難な状態になったりします。

その上、足全体が扁平足や開張足になり、足の裏や小指の方まで痛みが広がってしまいます。最後には靴をはかなくても、痛くて歩けなくなります。こうなってからでは手術しか手がありません。それどころか、手遅れになってしまって手術をしてもなかなかよくなりません。

外反母趾の時期は、可逆期、拘縮期、進行期、終末期に分けられます。

(1)可逆期(代償期) 初めの内は、親指の外反が、手技療法をしたり、靴を脱げば、筋肉や関節包・靱帯などの伸縮力によって元に戻ります。

(2)拘縮期(非代償期) 長い間、外反母趾が続いていると、内側の関節包や靱帯が縮んでしまい、親指を外側に曲げる内転筋も短くなり、拘縮が起き、外転筋や手の指で、足の親指を正常な位置に戻そうとしても、元に戻らなくなります。

(3)進行期(悪期) さらに外反母趾が続くと、親指のつけねの関節が、内側に外れてしまいます。こうなると、足の指を曲げたり伸ばしたりする力が、親指を外側に曲げ、第一中足骨を内側に広げるように働くので、靴に押されなくても、歩こうとして、親指に力を入れるだけで、親指が外側に曲がってしまい、外反母趾が自然に進行します。

(4)終末期:親指が他の指に重なり、親指の関節が脱臼したような状態。 外反母趾が進行していくと、ついには、親指は人差し指の下にもぐり込み、親指のつけねの関節は脱臼します。こうなると、親指を踏み返すのが難しくなります。しかし、腱が親指を引っ張っても、脱臼したような状態なので、これ以上外側に曲がらなくなります。指のつけ根の靭帯が伸びたり、緩んでしまった上に、靴など履物によって締め付けられることで結果、親指が小指側に曲り変形した状態。足に合わない靴を履いている場合になりやすく、特にかかとの高い靴を長時間履いている場合になりやすいと言われています。幅の広すぎる靴を履くことにより足が前に滑り、つま先部分に足が入り込んで圧迫され、発症するケースもあります。 同じ要因によって外反母趾とは逆に足の小指が親指の方向に曲がってしまう症状は内反小趾と呼ばれます。

原因

外反母趾に対する注意が必要な人に共通するのは、「女性」、「遺伝」、「体質」、「環境」です。 その他にも、次のようなものがあげられます。

1.合わない靴(特にハイヒール) ハイヒールを履くと、足底にかかる体重は前足部(指)に集中します。その結果、足は横に広がります。 しかしハイヒールは先細りになっているため母趾の付け根は、くの字に曲げられ外反変形を生じます。

2.足の筋肉低下 現代では一日を靴で過ごす時間が長く、裸足で過ごす時間が減少してきました。 また、乗り物を利用する事が多く自分の足で歩く事も減少しています。 最近では赤ちゃんの時から靴を履くようになり、足の筋肉及び骨格形成に悪影響を与えています。 このようなことから、現代社会では足の筋肉は低下傾向にあり、アーチの無い扁平足や横幅の広い足が増えています。 これが外反母趾の原因の一つなっていると考えられます。

3.扁平足(横アーチ、縦アーチの崩れ) 足の裏には非常に重要な3つのアーチがあります。 •親指の付け根から踵を結ぶ内側の縦アーチ •小指の付け根から踵を結ぶ外側の縦アーチ •親指の付け根から小指の付け根を結ぶ横アーチ

この3つのアーチが立つ・歩く・走る等、体重を支えると同時に怪我を防止するスプリングの役目をしています。 健康な人の足はこの3つのアーチがきれいに形作られそれぞれの役割を果たしていますが、外反母趾の人の足はこの3つのアーチが崩れて横広の足になっています。 アーチの減少も足の指を握ったり、開いたり出来なくなる要因のひとつです。

4.外反扁平 扁平足にはもう一つ外反扁平足があります。 この扁平足は縦アーチの崩れによって起こり、立っている状態で足を真後ろから見たときに踵が外側に(くの字)に傾く状態を言います。 この外反扁平足も外反母趾の大きな原因です。

5.浮き指 立っているときや歩いている時に地面に足の指が接地せずに、足の指を浮かせ地面をしっかり掴めてない状態、この様な足は扁平足から外反母趾になりやすい足です。 足の指が浮き上がってないか確認しましょう。

6.開張足 足の甲の幅が広がった状態(横アーチの崩れ)を開張足と言います。 開張足は横アーチの崩れで指に力が入りにくい為に、靴の圧迫などで親指や小指が萎縮してしまいます。 この状態を曲がりと言い、外反母趾や内反小趾と呼んでいます。 つまり横アーチを崩すことで指を握る筋肉が低下し開張足になり、それが進行した結果が外反母趾の原因です。 私たちの足は、内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つのアーチで構成されています。この3つのアーチがドームを作ることで体重をしっかり支えて地面からの衝撃を吸収しています。3つのアーチの中で、2つの縦アーチだけが崩れて、土踏まずが無い状態の足を扁平足と呼び、横アーチが崩れて、横幅が広がった状態の足を開張足と呼んでいます。

検査

外反母趾かどうかは、親指の曲がった角度、すなわち外反母趾角で決まります。外反母趾角は、第一中足骨と母趾基節骨がつくる角度です。

外反母趾角は5~8度が正常で、15度以上は外反母趾です。20度までは軽症、20~40度までは中等度、40度以上を重症の外反母趾としています。

自分でチェックするときは、足の内側のラインで、親指のつけねが曲がる角度を測ります。紙の上に立って体重をかけ、親指の出っぱりの前と後ろに定規を当て、2本の線を引き、その角度を分度器で測るとよいでしょう。

その他にも歩き方などの問題が考えられていて、次のような方は要注意です。 床の上を素足で歩くとペタペタと音がする。 歩行中に何もない所でつまずくことがよくある。 長距離でもないのに歩くとすぐ疲れる。歩くのが遅い。 靴底の外側の部分がよく擦り減る。 靴下の親指の先端だけがよく破れる。 片足で立つと5秒以上立っていられない。 足のすねの外側の部分が張って疲れやすい。 足の指で力強く「グー」の形をすると足がつる。

治療・予防

治療法には手術と手技療法や運動療法などがあります。細かくいうと、靴の指導、運動療法(タオルギャザーなど)、足底板療法(アーチサポート療法)親指と人差し指の間にガーゼを挟んで指の間を広くする方法などがあります。 症状が悪化すると激しい痛みを起こすため、歩行障害を起こすこともあります。 さらに症状が悪化すると手術による治療が必要になることもありますが、手術で外反母趾を治療しても、時間が経つにつれ再発する可能性が高くなるため治療後も歩行の仕方や靴の選び方などの注意が必要になります。 よって、初期の段階で治療することが重要になります

予防と改善

原因の一つが歩き方にあるところから、外反母趾の予防と改善にはまず、歩行の改善が必須です。 正しい歩き方は、かかとを地面に着けて足の指まで体重移動させ、指で地面を蹴ります。ヒールの高い靴などの靴では正しい歩行ができないため、自分の足に合う靴を履きましょう。

足に合う靴とは、キッチリピッタリしているのではなく、歩いたときにもっとも違和感なく自然に歩くことができるものです。靴の中である程度指を動かせる余裕が必要で、足の幅や長さだけではなく、甲の高さや土踏まずのアーチなども重要なポイント。なかでも爪先のかたちが重要です。その他にも、低めのヒール(3㎝程度のもの、5cmは超えない)のものや足の甲の革が軟らかく、親指の付け根に縫い目がないものなどがあります。革靴の場合は、あまりにも革が硬い靴を長時間はき続けると、疲れやすくなります。おろしたばかりの新しい靴は、短時間履いて少しずつ慣らしていきましょう。人間は朝より夕方のほうがむくんで足が大きくなっていますので、午後にあわせてきつく感じない靴を選ぶのが肝心です。

仕事などでやむを得ずつま先の細い靴を履く場合には、こまめに靴を脱ぐなど足の指を長時間同じ状態にしないような工夫が必要になります。